1.電視観望と天体写真とは?
近年、天体観測(天体観察)の一種の形態として、望遠鏡にCMOSカメラ(天体用)のものを使用して、ライブスタック(メーカーによって様々な呼び名がありますが)機能を利用して短時間で撮影した写真をリアルタイムに合成していき、接眼レンズを通して観察するのではなくCMOSカメラの画像を合成することで、天体の画像をスマートフォン等の画面で観察するという電視観望(EAA)というものがあります。
従来の天体写真では高価な撮影機材を使って長時間の撮影を行って、持ち帰ったデータを画像処理ソフトを使って補正をしてと1枚の写真を撮影するのに大変な手間暇をかけて1つの作品として仕上げるといった作業を行ってきました。
電視観望と天体写真をAIで表にしてみた結果は下記のとおりとなり、天文雑誌の記事等でも殆ど同様の回答になると思います。
| 項目 | 電視観望(EAA) | 天体写真(Astrophotography) |
| 主な目的 | その場で、肉眼より鮮明な天体像をモニターでリアルタイムに近い感覚で観察・共有すること。 | 芸術的な写真作品として、長時間露光と画像処理により、肉眼では見えない細部や色を追求すること。 |
| 露出時間 | 短い露光(数秒〜数十秒)の画像を多数撮影し、その場で重ね合わせる(ライブスタック)。 | 長い露光(数分〜数十分)の画像を多数撮影する。 |
| 画像処理 | 観察中にリアルタイムでノイズ低減(ライブスタック)と簡易な強調処理を行う。 | 撮影後にPCで時間をかけて詳細な画像処理(スタッキング、強調、色調整、ノイズ除去など)を行う。 |
| 機材の要求 | 比較的小型・安価な望遠鏡と高感度CMOSカメラでも楽しめる。高度な赤道儀追尾精度は必須ではない。 | 非常に高い追尾精度を持つ頑丈な赤道儀、ガイド鏡、冷却カメラなど、高価で大型な機材が必要となることが多い。 |
| 所要時間 | 天体導入から画像表示まで短時間(数分程度)で完了する。 | 撮影に数時間、撮影後の画像処理にさらに数時間〜数十時間かかることもある。 |
| 主な成果 | モニターに表示される「ライブ」の天体像の共有。 | 完成された高精細な静止画像(作品)。 |
| 魅力 | 手軽さ、時短、多人数での共有、都会でも淡い天体が見える感動。 | 芸術性、最高のディテールと色合いの追求、一つの作品を完成させる達成感。 |
簡単に要約すると短時間で天体を撮影しリアルタイムにライブスタックし徐々に天体を見えるようにしていき眼視では見えないようなものまで見えるようにしていくのが電視観望で、長時間露光でじっくりと撮影をして作品として高画質な写真に仕上げていくのが天体写真ということになります・・・。
2.ん?ちょっと待てよ?
電視観望と天体写真の違いは、もっと単純にいうとAI等の技術を駆使してライブスタックを自動化したもので、天体写真は長時間露光でじっくりと芸術作品に・・・この説明に違和感を覚えたのは私だけではないと思います。
そうなんです。
天文雑誌などの記事は「電視観望=眼視観望の変わり」というイメージに強引に持っていこうとしているような気がします。電視観望の目的は確かにリアルタイムで少しずつ浮かび上がってくる星雲や星団の姿を楽しむこともありますが、最終的に出てきた映像を保存した途端に、「電視観望=天体写真」となるということになり、さらに電視観望自体の目的が綺麗な像が得られるまで「何十分でも待つ」ということになりますから、実は「眼視の変わり」ではなく「天体写真の一種」ということが正しい理解だと考察します。
実際のところ現代における「天体写真」の機材も電視観望と同じ「CMOSセンサー」を使った撮影となります。そして、そこで使われる技術も殆ど同じ技術を用いて撮影を行っています。ただ、電視観望で使用される機材が大口径の望遠鏡ではなく小型の望遠鏡で処理をしているということで気軽に始めることができるということぐらいしか実際は違いはありません。(星夜写真という通常の広角レンズを使って天の川と風景を一緒に撮影したりということも含めいろいろ手法はありますが)
3.そもそも眼視とは?
書いて字のごとく眼視とは目で見ることです。望遠鏡を使わず夜空を見上げて星座を探しことも、望遠鏡や双眼鏡の接眼レンズを覗くことも眼視となります。明るい対象であれば、眼視でも発見できる星雲星団や、土星や木星や月の姿などは画像では味わえないものがあります。あくまでも肉眼で見ることが目的であり電子的に作られた映像をみるものとは少し違う位置づけではないでしょうか?
4.結論
電視観望は、撮影と同時進行で画像処理を行いながら処理の経過の映像も楽しめるという仕組みのことで、決して眼視の一種ではなく天体写真の一種であるというのが私なりの結論となります。
なので、「はじめての望遠鏡選び」ではスマート望遠鏡等のハイテク望遠鏡ではなく、眼視での観察に重きをおいて、探す楽しみ、肉眼で確認する楽しみに特化した機器を選定しています。

