湘南の光害と星空

湘南の光害と星空~明るい街の夜空でも、星を楽しむ方法~

海と山に囲まれ、自然豊かなイメージのある湘南エリアですが、夜空を見上げて、思ったより星が少ないな」と感じたことはありませんか?その大きな理由の一つが、街のあかりによって夜空が明るくなる光害(ひかりがい)です。

湘南は東京や横浜などの大都市圏に近く、住宅地や商業施設、道路などが広がっているため、天体観測では人工光の影響を受けやすい地域ですが、光害があるからといって、星空を楽しめないわけではありません。湘南には、湘南ならではの星空の楽しみ方があります。

ここでは、湘南の光害の特徴から、街中でも星を楽しむ方法、そして子どもたちと一緒に考えたい星空を守る取り組みまで紹介します。


1. 湘南の光害とは

湘南エリアには、藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市、鎌倉市などの都市・住宅地域が広がっており、道路には街路灯があり、店舗には看板や照明があります。それ以外にも住宅から漏れる光、自動車のヘッドライト、施設やスポーツ設備など、夜間にもさまざまな人工光があります。こうした人工光が、本来照らす必要のない方向へ漏れたり、周辺環境に対して不適切な明るさや使われ方をしたりすることで、夜空や周辺環境などに影響を与えることがあります。

これが光害(ひかりがい)です。

環境省では、光害を、人工光の不適切な使用や漏れ光によって良好な光環境の形成が阻害される状況、またはそれによる悪影響として整理しています。天体観測だけでなく、人や動植物などへの影響も含めて考えられています。

湘南は暮らしやすく、多くの人が生活する地域である一方、天体観測という視点では、人工光の影響を考える必要がある地域でもあります。


2. なぜ街では星が見えにくいのか

街が明るいと、なぜ星が見えなくなるのでしょう?

理由の一つは、地上から放たれた人工光が大気中で散乱し、夜空そのものを明るくしてしまうためです。街の光が上空へ漏れると、大気中の分子やエアロゾルなどによって光が散乱しまうことから、暗い場所では黒く見える夜空が、都市部では灰色や白っぽく見えることがあります。このような夜空の明るさは、スカイグロウなどと呼ばれます。

夜空そのものが明るくなると、暗い星から順番に見えにくくなり、星が消えているのではなく、星の光が街の明るさに埋もれてしまっているということになります。また、湿度や雲、霞、エアロゾルなど大気の状態によっても、人工光の見え方は変化します。そのため、同じ場所でも、今日は星がよく見える。今日は空が白っぽい。という違いが生まれます。


3. 海側と内陸側で星空は変わる?

湘南は一つの地域ですが、観測する場所によって星空の見え方は変わります。

海側・沿岸部

国道134号周辺などの沿岸部は、海側に視界が大きく開けているという大きなメリットがありますが、一方では道路や住宅地、商業施設などの人工光も存在します。他にも海岸付近では湿度や霞などによって空の透明度が変化するため、海の近くなら必ず星がよく見えるとは限りません。

内陸側

湘南北部や丘陵地、農地などでは、場所によって周囲の直接的な照明が少なくなることがあります。特に重要なのが、自分が立っている場所の周囲にどれだけ強い光源があるかです。遠くの街の明かりだけでなく、近くにある街灯や自動販売機、店舗の照明なども、暗い星を見るときには大きな影響になります。そのため、湘南で観測場所を探すときは、街から離れているかだけでなく、直接目に入る光が少ないかにも注目してみましょう。


4. 湘南では南の空にも注目

湘南で星を見るとき、特徴的なのが南側に広がる相模湾です。

湘南の沿岸部では、南方向に海が広がっているため、場所によっては大きく開けた空を見ることができ、これは天体観測にとって大きなメリットです。特に南の低い空には、季節によってさまざまな天体が姿を見せます。

しかし、南の空なら必ず暗いわけではなく、沿岸部の道路や施設などの照明、遠くの都市からの光などによって、南の空にも光害の影響はあります。それでも、南側が海に向かって大きく開けていることは、湘南ならではの星空観察の魅力の一つです。


5. 月明かりと人工光の違い

星を見えにくくする光には、大きく分けて月明かりと人工光があります。

月明かり

満月に近い時期は月が非常に明るく、暗い星や天の川などが見えにくくなります。しかし、月には満ち欠けがありますので新月前後には月明かりがほとんどない夜が訪れるため、星空観察には絶好の条件になります。

人工光

人工光による夜空の明るさは、月の満ち欠けとは関係なく存在するため、街中では新月の夜でも、空が完全に暗くなるわけではありません。

照明は明るければ悪いという単純なものではなく、安全や防犯、交通などに必要な照明もあります。重要なのは、必要な場所を、必要な明るさで、必要な時間だけ照らすことです。


6. 光害の中でも見やすい天体

光害があるからといって、星空観測を諦める必要はなく、明るい街では見える天体を選ぶことで、十分に楽しむことができます。

月

月は街中でも非常に見やすい天体なので、双眼鏡や小型望遠鏡を使えば、クレーターや海などの地形を楽しめます。満月だけではなく、半月や細い月など、月齢によって見え方が変化するのも魅力です。

惑星

木星や土星などの明るい惑星も、光害の影響を比較的受けにくい天体で、望遠鏡を使えば、木星の縞模様、ガリレオ衛星、土星の環などを観察できます。金星や火星なども、季節や時期によって楽しめます。

明るい恒星

シリウス、ベガ、アルタイル、プロキオンなどの明るい星は、都市部でも見つけやすい代表的な星なので、まずは明るい星を見つけることから始めてみるのもおすすめです。

星団

プレアデス星団(すばる)は、光害のある地域でも比較的楽しみやすい星団です。特に双眼鏡を使うと、肉眼とは違った星の集まりを見ることができます。


7. スマート望遠鏡・電視観望という選択肢

湘南のような光害のある地域で天体観測を楽しむ方法として注目されているのが、電視観望(でんしかんぼう)やスマート望遠鏡です。電視観望では、望遠鏡にカメラを組み合わせ、目では見えにくい天体の光を撮影します。

複数の画像を重ね合わせるスタッキングや画像処理を行うことで、肉眼では見えにくい淡い天体の姿を画面上に浮かび上がらせることができます。スマート望遠鏡では、こうした撮影や画像処理の一部が自動化されています。住宅地のベランダなど、従来なら天体観測には不利と思われていた場所からでも、星雲や銀河などを楽しめるようになりました。

もちろん、スマート望遠鏡を使えば光害が完全になくなるわけではないですが、街中だから淡い天体は無理から街中でも工夫すれば挑戦できるへと、天体観測の可能性を広げてくれる道具です。

※実際、スマート望遠鏡で地方の暗いところで撮影したときと、都心部で撮影したときとでは天体の浮かび上がってくるまでの時間の違いや、背景の黒色のレベルの違いや、ノイズの乗り方の違いが目に見えて異なります。


8. 暗い場所へ行かなくても楽しめる星空

星を見るために、毎回遠くの山や高原まで出かける必要はありません。むしろ大切なことは、暮らしの中で星を見るという楽しみ方であると思います。

自宅のベランダから月を見る。

近所の公園から明るい星を探す。

夕方に金星を見つける。

木星が見えていることに気付く。

そんな小さな星空体験でも、宇宙との距離を身近に感じることができます。暗い星が見えないからといって、星空観測が失敗というわけではありません。今日は昨日より星が多い、今日は空が白っぽい、月が明るいから星が少ないといった違いに気付くことも、立派な天体観測です。


9. 光害を減らすためにできること

光害対策は、照明を全部消すことではありません。

安全性や暮らしやすさを維持しながら、必要以上の光を減らすことが大切です。

光の向きを下向きにする

照らす必要のない上空へ光が漏れないよう、適切な配光の照明を使用します。(街灯なども傘を付けるだけでも大分夜空への影響は緩和されます)

必要な場所だけ照らす

人がいない場所まで一晩中明るくする必要がない場合は、センサーやタイマーなどを活用します。(特に玄関灯など、センサーライトにすることで省エネにも繋がります)

必要以上に明るくしない

明るければ安全というわけではありません。明るければ安全なのであれば都心の繁華街は安全そのものとなりますが、現実的はそんなことはありません。目的に応じた適切な明るさを考えることが重要です。

光の色にも配慮する

照明の色についても、周辺環境や目的に応じて検討することが大切です。LEDそのものが光害の原因というわけではないという前提のもとで、LEDは配光を制御しやすいという特徴もあり、適切に設計・配置することで、光害を抑えながら必要な照明を確保することにも活用できます。


10. 子どもと一緒に星空を守ることを考える

どうしてここでは天の川が見えないの?子どもたちのそんな疑問は、光害について考える素晴らしいきっかけになります。光害は、単に星が見えなくなるという天文学上の問題だけではありません。

不適切な人工光は、人の生活環境や動植物などにも影響することがあります。だからこそ、使っていない部屋の明かりを消す、外の照明を必要以上に明るくしない、必要な場所だけを照らすといった小さな行動にも意味があります。何より、星空を見上げることから環境について考えることが、なによりも大切にしたいことです。

光害について、もっと学んでみよう

光害って、具体的にはどんな問題なの?

自分たちの住んでいる町には、どんな光があるんだろう?

そんな疑問が生まれたら、とらねこ天文台の光害を考えるための学習教材である、光害を考えるを活用してみてください。この教材では、光害の基礎知識や星空観察のコツを学べるスライドに加えて、ワークシートも用意しています。

町中のどこから光が漏れているのか?
必要な光と、必要以上の光は何が違うのか?
星空を守るために、自分たちに何ができるのか?

実際に夜の街を観察しながら考えることで、光害を身近な環境問題として学ぶことができます。親子での学習はもちろん、学校での環境学習、総合的な学習、自由研究・探究学習のテーマとしても活用できます。

個人的な感覚とはなりますが、幼少期に体験した課題は大人になっても課題として心の中に残って自ずと行動に表れるものと考えています。日本ではゴミのポイ捨てが少ないと言われているのも教育の中で幼少期から教えられてきたからであり、それが大人になっても個々人の規範として当たり前のものになっているからだと思います。

👉 「光害を考える」学習教材はこちら

星が見えない理由を知ることから、星空を守る行動へ。湘南の夜空を実際に見上げながら、親子で一緒に光と星空の関係を考えてみませんか?

湘南の夜空は、街の中にもある

湘南は、決して日本有数の暗い星空観測地ではありません。だからこそ面白い地域でもあります。

海に面した開けた空。

街の明かり。

住宅地の夜。

そして、その上に広がる本物の星空。

明るい街の中でも、月や惑星、明るい恒星、星団などを見ることができます。望遠鏡や電視観望を使えば、肉眼では見えない遠い宇宙にも目を向けることができます。星空観測は、暗い場所へ行かなければできないものではありません。今日の夜、家のベランダから見上げた空にも、宇宙は広がっています。

まずは一つの星を見つけることから、湘南の街の明かりの向こうに広がる星空を、一緒に楽しんでみませんか?


【出典・参考データについて】

この記事では、光害や星空観察について、主に以下の公的資料を参考にしています。

■ 環境省「光害対策ガイドライン」

光害の基本的な考え方、人工光の漏れや照明環境、屋外照明の配光などについて参考にしています。

環境省「光害ガイドライン、パンフレット等」

環境省の令和3年3月改訂版「光害対策ガイドライン」では、人工光の不適切な使用や漏れ光による人・動植物・夜空などへの影響を考慮し、良好な光環境を形成するための考え方が示されています。

■ 環境省「星空を見よう」

星空観察を通じて光害や大気環境について考えるための資料として参考にしています。

環境省「星空を見よう」

環境省では、星空観察を通じて光害や大気環境への関心を深めるとともに、美しい星空を地域資源として観光や教育に活用することを目的として、星空観察を推進しています。

■ 環境省「星が見えない!光害ってなに?」

光害の原因や、人工光が目的外の方向へ漏れることによる影響などについて参考にしています。

環境省「星が見えない!光害ってなに?」

環境省は、照明器具からの光が目的外の方向へ漏れたり、周辺環境にそぐわない明るさ・色であったり、必要のない時間帯まで点灯していたりすることを、光害の要因として説明しています。

■ 環境省「令和8年度夏の星空観察」

2026年度の星空観察についての最新の環境省資料も参考にしています。環境省では、2026年度も肉眼による星空観察やデジタルカメラによる夜空の明るさ調査を実施しています。星空観察を通じて、光害や大気環境について考える機会とすることが目的の一つです。

■ 湘南地域について

この記事における「湘南」は、一般的な地域名称として、主に湘南海岸周辺およびその周辺地域を指しています。「海側」「内陸側」「南の空の見え方」などについては、湘南地域の地形や市街地の分布、海岸部からの視界などを踏まえた、天体観測上の一般的な特徴として解説しています。

実際の星の見え方は、観測地点、周辺の照明、天候、湿度、雲、透明度、月明かりなどによって変化します。そのため、本記事の地域的な説明は、特定地点における夜空の明るさを測定した観測データそのものを示すものではありません。


■ とらねこ天文台「光害を考える」教材

この記事と関連して、とらねこ天文台では、光害について親子で学び、実際の街を観察するための無料教材を公開しています。

「光害(ひかりがい)を知っていますか?」

光害を考える

 

学習用スライド「光害を考える」と、実践ワークシート「星空を守ろう!光害かんさつワークシート」を公開しています。

※参考資料について

公的資料の内容や観測方法は、今後変更される場合があります。最新の情報については、各機関の公式サイトをご確認ください。

本記事は、公開されている公的資料や天文学的知見を参考に、とらねこ天文台が湘南地域での星空観察や環境学習に役立つよう編集・構成したものです。