M44_2025/09/26

【基本データ】

M番号: M44
NGC番号: NGC2632
愛称: プレセペ星団
※英語圏では Beehive Cluster(ビー・ハイブ・クラスター/蜂の巣星団) とも呼ばれます。
天体の種類: 散開星団(さんかいせいだん)
星座: かに座
見頃の季節: 春
視等級(明るさ): 約3.1等
※資料によっては約3.7等とされることもあります。
地球からの距離: 約577光年
※資料によって多少の違いがあります。
見かけの大きさ: 約95分角
(満月の見かけの大きさの約3.2倍にもなる、非常に広い星団です)

【見え方の目安】

肉眼:〇~◎(M44は、空が暗い場所なら肉眼でも見ることができます。かに座の中央付近に、星が一つ一つ分離して見えるというより、ぼんやりとした光の雲のように浮かんでいるのが特徴です。都市部では街明かりの影響を受けやすく、肉眼で確認するのが難しくなることがあります。)
双眼鏡:◎(M44の美しさを最も手軽に引き出せる、おすすめの機材です。広い視野の中に、数十個もの星がパラパラと散らばって見え、肉眼では「光の雲」だったものが、たくさんの星の集まりへと姿を変えていきます。)
小口径望遠鏡(5~9cm):◎(できるだけ低倍率で、広い視野が得られるアイピースを使うのがおすすめです。明るい星々が視野の中で力強く輝き、散開星団らしい美しい姿を楽しむことができます。)
中口径望遠鏡(10~19cm):〇(より暗い星まで見えるようになり、星の数が増えていきます。M44は非常に大きな星団なので、倍率を上げると星団全体が視野に収まりにくくなってきます。)
大口径望遠鏡(20cm以上):△~〇(大口径望遠鏡では、さらに暗い構成星まで見えてきます。M44の場合は大口径・高倍率=より美しいとは限りません。倍率を上げるほど視野が狭くなり、巨大なM44の一部分しか見えなくなるため、「広い範囲に星々が集まっている」というM44本来の魅力を感じにくくなることがあります。)
※見え方は、望遠鏡の口径だけでなく、空の暗さ、透明度(とうめいど)、月明かり、倍率(ばいりつ)、観測者(かんそくしゃ)の暗順応(あんじゅんのう)などによって大きく変わります。

【特徴と解説】

M44は、春の夜空に昇るかに座の中心付近にある、非常に大きく明るい散開星団です。

地球から約577光年と比較的近い場所にあるため、夜空では非常に大きく見えます。その見かけの大きさは約95分角となり、これは満月の見かけの大きさの約3.2倍に相当します。

M44は小さな望遠鏡で大きく拡大して楽しむ天体というより、広い視野で星団全体を眺めることで魅力が増す天体なのです。望遠鏡が発明されるはるか昔から、肉眼でぼんやりとした光の雲として知られていました。そのため、世界各地でさまざまな名前や伝承が生まれています。

【ロバの飼い葉桶‐西洋】

現在よく知られているプレセペ(Praesepe)という名前は、ラテン語で飼い葉桶を意味します。M44の両側には、かに座のγ星(ガンマ星)とδ星(デルタ星)という明るい星があります。古代の人々は、この2つの星を2頭のロバに見立てました。その2頭のロバがM44という飼い葉桶の餌を食べている、のどかでユーモラスな星空の姿として考えられていました。同じ夜空を見上げても、そこにロバと飼い葉桶を見いだしたというのは、とても興味深い文化です。


【積尸気‐中国】

中国では、M44は積尸気(せきしき)と呼ばれていました。積尸は死者・死体が積み重なったものを意味し、気はそこから立ち上る気や気配を表します。M44のぼんやりとした光を、死者から立ち上る気、あるいは死者の魂や気配が集まったものとして捉えたと考えられています。

西洋でロバが飼い葉桶の餌を食べているという牧歌的な姿として見られたのに対して、中国では死者や魂を連想させる、神秘的で厳かな存在として捉えられていたのです。同じ星の集まりを見ているのに、文化によってここまで違ったイメージが生まれていました。M44は、そんな人間と星空との関わりを考えさせてくれる天体でもあります。


【観測のポイント】

M44を観測するときのアドバイスは、大口径・高倍率の望遠鏡の落とし穴に注意して、あえて双眼鏡や低倍率で楽しむように心掛けることです。M44は、とにかく見かけのサイズが巨大です。大口径望遠鏡で高倍率をかけてしまうと、視野が狭くなり、M44の一部分しか見えなくなってしまいます。すると、星はたくさん見えるのに、星団全体の姿が分からないという、少し不思議な状態になることがあります。

M44では、必ずしも大きく見れば見るほど良いというわけではありません。まず肉眼で、かに座の中にぼんやりとした光の雲を探してみましょう。そして見つけたら、双眼鏡を向けてみてください。すると、光の雲だったM44が、たくさんの星々へと変わっていきます。

肉眼 → 双眼鏡 → 低倍率望遠鏡という順番で楽しむと、M44の大きさと美しさを実感しやすいです。M44は、大きな望遠鏡で拡大するのではなく、広い視野で引いて見ることが楽しい星団なのです。

そして、星々を眺めながら、ぜひM44にまつわる文化にも思いを馳せて、2頭のロバが飼い葉桶の餌を食べていると見るか?それとも、中国の人々が感じ取った、死者の魂や気配が漂う場所として想像するか?同じ星空でも、そこに込められた物語は大きく異なります。

天体観測は、単に星の位置や明るさを調べるだけではなく、その星を昔の人々がどのように見て、どのような物語を作ったのかを知ることも、星空を楽しむ方法の一つです。そんな星空と人間の文化のつながりを感じさせてくれる、春の夜空の美しい散開星団です。

【撮影データ】

撮影日: 2025年9月26日

撮影機材: スマート天体望遠鏡 Seestar S50