光害についての説明は前回おこないましたが、今回は光害が激しい場所でも、工夫次第で天体観察は十分楽しめます。
重要なのは「いかに空の明るさに打ち勝つか」ではなく、「いかに影響を最小限にして対象を選ぶか」という視点です。
1. 観察対象の選び方:明るい天体を狙う
光害下では「暗い天体(星雲・銀河)」は見えにくいため、光り輝く天体に絞ることが成功の鍵です。
月と惑星: 光害の影響をほぼ受けません。特に木星、土星、火星は市街地でも非常に明るく、望遠鏡を使えばクレーターや環の模様も鮮明に見えます。
明るい恒星・二重星: シリウスやベガなどの1等星や、色の対比が美しい二重星(アルビレオなど)は光害下でも十分に輝いて見えます。
散開星団: プレアデス星団(すばる)などは密集しているため、光害地からでも存在感を確認しやすい対象です。
2. 観察環境の工夫
光を遮断・軽減することで、目の感度(暗順応)を高めます。
「直接光」を遮る: 街灯や隣の家の明かりが直接目に入らないよう、建物の陰や塀を利用します。※フード(遮光板)を望遠鏡や双眼鏡に装着するのも非常に効果的です。※ベランダの場合は三脚を低くし街灯等の光を遮断すると効果的に外部からの光を遮断できます。
暗順応を守る: スマホの画面の明るさを下げ、できれば赤色フィルターアプリを使用します。目には「夜間視力」を維持するため、赤色灯の懐中電灯を使うのが鉄則です。※多くのスマホやパソコンの星座盤アプリケーションではナイトモード等各社で呼び名は異なりますが、赤色の表示に切り替えるモードがあるので、そちらを使用するのも有効な手段です。
天頂付近を狙う: 地平線に近い空は街の明かり(大気の散乱光)の影響を強く受けますが、頭の真上(天頂)は空気の層が薄いため、比較的暗く星が見えやすいです。※私もベランダ観察が主なので、観察対象にする天体は低い位置よりも天頂付近の天体を狙っています。
3. 機材による補助
光害カットフィルター: 街灯の光(主に水銀灯やナトリウム灯の波長)をカットし、星雲の光を通す特殊なフィルターです。望遠鏡の接眼レンズに取り付けると、星雲のコントラストが劇的に向上します。※スマート望遠鏡では標準搭載されていることが多いですが、通常の望遠鏡でも光害カットフィルター(市販品)を取り付けることで、光害の影響を軽減できます。一般的な望遠鏡ではアクロマートレンズと呼ばれる色消しレンズが採用されていますが、アクロマートレンズは完全には色消しを行えないことから、地上の撮影や月の撮影等、明るい対象の場合偽色が発生してしまいます。この光害カットフィルターは文字通り特定の波長の光を通さないように設計されていることから、通常の望遠鏡に取り付けるとアクロマートレンズがEDレンズやアポクロマートのようなスッキリした画像に仕上げることができますが、かなりマニアックな話題になることから、詳細な内容については別途記事として理屈や実際の取り付け方なども紹介したいと思います。
双眼鏡の活用: 望遠鏡よりも視野が広く、明るい天体をさっと導入するのに適しています。光害地では「倍率よりも明るさ(口径)」を重視した双眼鏡が有利です。
ステップアップ:光害地でもできる「天体写真」
もし撮影に興味があるなら、「スタック処理」という技術が非常に有効で、短い露出で何十枚も撮影した写真をパソコンのソフトで合成することで、街の明るさを打ち消し、星の光だけを浮かび上がらせることができます。